ハミルトン VS ハミルトン
実は・・・
F1ドライバー「ルイス・ハミルトン」 VS スイスの時計メーカー「ハミルトン・インターナショナル社」
が裁判をした結果、ルイス・ハミルトンの敗訴が決まりました。
何を争ったのかというと・・・「ハミルトン」という名称です。
詳細を解説します。
ハミルトン裁判の経緯
ルイス・ハミルトンは、「44IP」という会社を経営しています。(厳密には、知的財産権を管理する法人「44IP Limited」)
仕事は、F1ドライバーだけではなかったんですね(ハミルトンのF1カーナンバーは44ですから関係が全くないわけではありませんが)。
44IPは、時計や宝飾品などの商品に「ハミルトン」という商標登録しようとします。
”自分の会社の商品名に自分の名前を使いたい”
と思うのは当たり前のことです。(時計メーカーの「フランクミュラー」も人名からきていますから、前例は多くあります。)
しかし、ここで”まった”がかかります。
というのも、既に「ハミルトン」という商標は、時計メーカーの「ハミルトン・ウォッチ」によって登録済です。
ハミルトン・ウォッチは、ハミルトン・インターナショナル社が1892年に創業した高級腕時計ブランド「HAMILTON」を所有する会社のことです。
両者は、裁判で対決することになります。
それぞれの主張
ルイス・ハミルトン(44IP)は、自分の会社で商標「ハミルトン」を使いたいので、ハミルトン・インターナショナル社の特許を取り消したい。
そのため、以下を主張します。
- 悪意ある登録
- 公序良俗に反する競合標章の登録
ハミルトン・インターナショナル社が「HAMILTON」という名称の商標登録を出願したのは「2014年11月25日」⇒欧州連合知的財産庁(EUIPO)は「2015年5月5日」に欧州連合商標(EUTM)に登録。(日本なら、経済産業省特許庁へ特許出願して認められたイメージです。)
商標登録したのはかなり最近のことだったんですね。
また、英語圏ではハミルトンという苗字は一般的です。
つまり、ルイス・ハミルトン側は、
・自分の名前にあえてかぶせてきているのは悪意がある行為
・広く一般的なハミルトンは誰が使ってもいいはず
と主張します。
一方、ハミルトン・インターナショナル社は先に使用・登録した側の権利を主張。つまり、ルイス・ハミルトンがハミルトンという商品を販売することを認めたくない。
そのため、以下を主張します。
- 1892年から商標「HAMILTON」は使用されているため、かぶせたわけではない
- ハミルトンは広く一般的な苗字であることからこそ悪意はない
商標登録したのは最近ですが、100年以上も前からハミルトンは使用しており、ルイス・ハミルトンが生まれる前であったことは確実です。
また、ハミルトン・ウォッチは、1892年に米国で設立⇒スイスに拠点を移し買収されていることから(ルイス・ハミルトンの出身地のイギリス)、あえて狙ったという事実の証明は難しいでしょう。
裁判の結果「ルイス・ハミルトンの訴えを棄却」
裁判は、約3年間にもおよびましたが、2020年10月20日に行われた第4回目となる不服審査会において欧州連合知的財産庁(EUIPO)は、ルイス・ハミルトン(44IP Limited)の訴えを棄却しました。
ルイス・ハミルトンの主張を認めず、ハミルトン・インターナショナル社が商標「ハミルトン」を使用することを認めました。
判断根拠は、
- 争われている商標は「LEWIS HAMILTON」ではなく「HAMILTON」であり、英語圏で一般的な性であることは両者とも認めている
- 商標「HAMILTON」は1892年から使用されていることは両者とも認めており、時計分野で重要な経済活動を示してきていることからも悪意があるとはいえない
などです。
登録だけしておいて特許を使えなくする手段は日本でもよく用いられますが、そのケースではないと判断したということです。
ルイス・ハミルトンの主張が逆に相手側の主張を認めてしまったという皮肉な結果となりました。
まとめ
ルイス・ハミルトン(F1ドライバー) VS ハミルトン・ウォッチ(時計ブランド)
の結果は、ルイス・ハミルトンの敗けで決着しました。
ルイス・ハミルトンが生まれる前から一般的な言葉を時計等の商標として使って経済活動をしていた会社が、ルイス・ハミルトンが申請する前に商標登録を済ませていた。
素人目に見ても当然な結果に思えますが、ルイス・ハミルトンも勝ち目がないと分かりながらも訴えなければいけない立場にあったのかもしれませんね。